11.24 2015

inter/VIEW Vol.01 – Cher | 山崎 嘉子

「本当に着たい服」と出会うための自分らしさを探して

裏原宿の小さなアパートの一室からスタートしたセレクトショップ「Cher(シェル)」。
高感度でありながら取り入れやすい、独自の感性でセレクト、デザインされた服たちは、
ブランド設立から20年が経った今も女性の心を掴んで離さない。
オーナー兼デザイナー兼バイヤーとしてCherを育て、
支えてきた山崎嘉子さんに自身のファッション観や、これからのCherについて伺った。


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物心が芽生えたときから今まで、ファッション一筋の山崎さん。彼女のファッションにおける原体験は小学校高学年の頃だった。
母にもらった一台のミシンとリーバイス
何を思ったか、母からもらった昔のリーバイスをどうしても履きたかったので、自分に合うようにワタリを詰めました。細くしすぎて無理やり履くことになった初めてのリーバイス。それがファッションに目覚めたきっかけです。私服通学だった高校生の頃は少ないお小遣いでいかにおしゃれをするかを考えるのが楽しかった。
アルバイトで販売員を始めたのもその頃で、入って3ヶ月くらいで売り上げ一位になった時は『アパレルに向いているかも』と思いました。年上のお姉さんに『あなたが言うなら買うわ』と言ってもらえるのが本当に嬉しくて、アパレルの道に進もうと迷わずに決めました。
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高校時代にファッション業界へ足を踏み入れてから、店長やプレス、バイヤーなど様々な職種を経験して13年。自分でリメイクした初めてのリーバイスに喜んでいた少女は、女性の憧れの的となる、小さなセレクトショップのオーナーになった。


Cher_20th_Anniversary_Cher_20周年を迎えた今、そして未来

「本当にいいと思うものだけを大事にする」軸はぶらさず、自分たちらしく挑戦し続けていく。
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ざっくりニットの下にヴィンテージのスリップ、ムートンコートの下にキャミソールとジーンズ。当時は考えられなかった斬新な提案で世の女性達のワードローブに革新を起こし、先を走り続けていたCherにも立ち止まった時期も訪れた。
Cherのように女性の感性を詰め込んだセレクトショップが増えて似たようなスタイルが蔓延してきた頃、他がやらない新しいことをしようと焦った時期があって、ハッと気付いたら自分たちが当初好きだった服とかけ離れたものを作っていました。そこで、新しいことだけを追求するのは私たちの使命じゃないよねってやっと目が覚めたんです。真似をされようがなんだろうが自分たちの好きなことをやろう、と原点に立ち返ったのがちょうど10年前。そのときブランドコンセプトを『自分たちが本当に着たい服』に改めました。

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「自分が本当に着たい服」を探すためには、トライアンドエラーが大事。

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自分たちらしさを見失った時期を乗り越えたからこそ、「らしさ」を軸として確立し、20年もブランドを続けることができたCherの強さ。それは山崎さん自身の強さでもあった。
未来なんて描いていなかった。
好きなことを、好きな人と楽しくやれたらいいなって。
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20年前ブランドを立ち上げた頃に思い描いていた未来と今はどう違っているのか尋ねると、少し困ったような明るい笑顔ではっきりと答えた。
未来は描いていなかったんです。好きなものを好きな人たちに売りながら、なんとかご飯を食べていけて、一年に一回くらいハワイでも行ければ良いかなくらいに思っていました。今もあまり遠くの未来については考えていないです。10年後20年後も同じようにスタッフと一緒に楽しく暮らして好きなことをやっていられたら良いなと思う。それが洋服屋じゃなかったとしてもね。
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Cherのコンセプトでもある「自分が本当に着たい服」に出会えることは多くない。今では抜群のセンスで女性のファッションアイコンとなっている山崎さんでも、「おしゃれ見習い」の時期はあった。SNSの普及により情報で溢れた今の時代とは異なり、山崎さんの高校時代にファッションのインスピレーション源となったのはショーウィンドーや映画、年上のおしゃれなお姉さん達。彼女達を真似してグラマラスな格好をしたが似合わずに撃沈するなど、失敗と勉強を繰り返して今のこだわりに辿りついた。
年を重ねると着られる服も限られてくるから、若いうちに「似合わないから」と言ってファッションの幅を狭めるのはもったいない。似合うものを決めつけないで、失敗しても良いから、色々なファッションを楽しむことが自分のセンスアップにつながります。

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趣味であるサーフィン好きが高じて鎌倉に完全移住したのは5年前。早朝に波を確認してサーフィンに行き、東京で仕事。帰宅してご飯を作り、お酒を飲んで1日を終えるリズムが出来ているので、遠くから通うのも苦ではないそう。
私にとってファッションは趣味なので、あまり仕事が辛いと思ったことはありません。夜中まで働いて休みが無くても、可愛いお洋服を見つけたらテンションが上がって疲れも吹き飛んじゃうんです。

ファッションは趣味。仕事でもあり遊びの延長でもある。
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ファッションを仕事と考えずに趣味として楽しんでいるからこそ、もうひとつの趣味であるサーフィンとうまく結びつき、相乗効果でデザインのインスピレーションが生まれる。
サーフィンを楽しむためにビーチにいても、水着のあの部分がもう少し違っていたらもっと可愛いのにとか、上下の柄がこうなっていたら、とか閃いてしまって、すぐにイメージをスケッチしたりします。それが製品やオリジナルのテキスタイルになったりすることも。デザインの種に出会った瞬間のチャンスを逃したくないんです。
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そう語る山崎さんの弾けるような笑顔は、自分らしく自然体でいるためにはオンオフをつけない生き方もあるのだと気づかせてくれる。
どうせ仕事するなら笑って楽しく働きたいですよね。

手帳に製品のスケッチをする山崎さん。アイデアが浮かんだらすぐにどこにでもスケッチをし、アイテムには愛を込めて一つ一つネーミングをしていく。

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山崎さんが軸をぶらさず楽しく仕事を続けていける秘訣は「小さなことでもこだわりをもって取り組む」こと。例えば、誰よりもストック整理が早かったり、トイレ掃除をしたら右に出るものはいなかったり。小さなことでも疎かにせず、自分なりに工夫して効率よく仕事をこなしてきたから今がある。
自分で選んだ仕事なんだから、もっと愛したらいい。考え方ひとつで働き方って変わると思うんです。好きなことで食べていくんじゃなくて、自分の仕事を好きになる、好きになれる仕事を見つければいいんじゃないかな。自分に合う仕事は絶対あるから、見つかるまで探せばいい。

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日常に潜むヒントに目を澄ましてみる。
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洋服が売れない時代と言われ、あまり良い風が吹いていないファッション業界。それでもファッションに情熱を注ぎ、未来を盛り上げていこうと頑張る若者が、今すべきこと。それは、目を凝らし、背伸びをすること。
特にデザイナーを志す方は、様々な場所にヒントが転がっているので、そのサインを見落とさないようにすることが大事です。だから仕事は仕事、プライベートはプライベートときっぱり分けてしまうと、日常に隠されたデザインの種を拾うことができなくなってしまう。洋服屋はいかにプライベートを仕事に生かせるかが成功するかしないかの大きな境目だと思います。
私が高校生の頃、年上のお姉さんに憧れて真似をしていたように、ファッションはいつだって少し背伸びをしなきゃ。カッコつけるのがファッションの仕事だと思うんです。頑張って少し背伸びをしてみたら、それが自分のものになる時が来ます。安物ばかり着ていてはいけません。仮にもファッションの仕事を一生のモノにしようと思うなら、無理してでも年に一度はいい服を買ってみてください。買って着てみないと何故それが本当に上質なものなのか分からない。例えばそれは香水でも下着でもいいんです。安い服でまとめた日には、見えない場所でもいいから何かひとつでも良いものを取り入れること。いいものを身につけることって、とても背筋が伸びることですよ。

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少し背伸びをしてみたら、いつかは自分のものに。
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出来もしないことにもチャレンジするような、無茶だけども勢いのある若い子が少ないと感じている山崎さん。昔はライオンのように食いつきがよくガッツのある子が多かったが、今はあまり見かけないという。
これは似合わない、出来ない、この仕事をする自信がないとか、自分の可能性を線引きして決めちゃうなんてもったいない。バカなことでもどんどんやってみたらいいと思います。若いんだから、もっとめちゃくちゃでいいんです!最初からパーフェクトに出来きる人なんていないから、怖がらず飛び込めばいい。そうすれば、見える世界が広がります。
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本人着用:カーディガン ¥35,000 / スカート ¥22,000 (全てBianca’s closet / Cher)

Photography:Sho Kato / Text : Azu Satoh

山崎嘉子 プロフィール

セレクトショップ「Cher」オーナー兼バイヤー兼デザイナー


1995年に同僚の南リカと共に裏原宿のアパートの一室からセレクトショップCherを開始。
2007年に発売したロゴを配したエコバッグがモデルの間で広まり一世を風靡する。
2008年には鎌倉・七里ヶ浜にオリジナルのビーチウェアやセレクトを扱う「CherShore」をオープン。
現在は鎌倉に住みながらファッション業界の第一線で活躍している。
2015年でブランド設立20周年を迎えた。


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Address. 〒150-0034 東京都渋谷区代官山町16-4
Tel. 03-5457-2261
Open. 平日12:00~20:00/土日祝12:00~19:00
Cher HP. http://cher-official.shop-pro.jp/
CherShore HP. http://chershore.shop-pro.jp/


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